フレキシブルアーム
提供: 計測自動制御学会
生産性の向上やエネルギーの節減のために、ロボットの軽量化・高速化が要求される一方、高度の精度も要求される状況にあって、ロボットアームを剛体とみなした従来の制御則では構造振動を発生させる恐れがあり、柔軟性によって生ずる振動や動的な相互干渉の問題が深刻になってきた。そのため、アームの柔軟性をも考慮した振動抑制制御を考えることが必要となった。
柔軟構造物の第1の特徴は、その弾性変位が位置の関数であり、いわゆる分布系の性質をもつことである。したがって、そのモデリングに当たっては、まず偏微分方程式によるモデルが考えられる。このモデルは、分布系の性質を簡潔な形で精密に表現しているが、制御系を設計するにはこれを離散化しなくてはならない。ここに用いられるのがモード解析によるモデルであり、物理的直感に訴えつつその挙動を理解することができる。図1に示す剛体に一様断面の細長い梁のついた物体の平面内の運動を考える。梁の先端には、ペイロードとして集中質量が付いているものとする。この物体を駆動するのは、剛体にかかるトルクである。このシステムは、集中系と分布系が組み合わされていて、梁の部分が分布系になっている。剛体の回転角を
、剛体支持点から距離
の点
の弾性変位を
とする。
基礎方程式を導出するには、ハミルトンの原理を用いる。弾性変位が小さい場合、次の線形方程式を得る。
(1)
(2)
(3)
(4)
ここに、
、
、
は無次元パラメータである。
この基礎方程式を制御系設計用の集中系モデルに直すために、この系の固有値方程式
(5)
を満足する
に対して、固有関数
(6)
を求める。ここに、
は任意定数である。ここで、
(7)
とおけば、固有関数の直交関係を用いて、集中系方程式
(8a)
(8b)
が得られる。ここに、
で、かつ
(9)
出力としては、回転角
、梁上の1点
でのひずみ
をとると、
(10)
のようになる。
式(8)の系は分布系と等価であるが、制御系の設計には、この系を有限個の展開で打ち切ったものが用いられる。また、分布系の制御のためには空間的に連続な状態量
を観測する必要があるが、これは不可能であり、空間的に離散的な測定量から補間した量で近似する。
このために有限モデルで設計した制御系を分布系に適用すると、スピルオーバ現象が生じて閉ループ系が不安定になる可能性がある(「スピルオーバ」の項を参照)。
ロボットアームの位置制御には通常、回転角のみをフィードバックする。比例+微分(PD)制御が行われるが、アームに柔軟性がある場合でも、スピルオーバ不安定は生じないことが示されている。
しかし、このことは柔軟性による振動が除去されることを意味するものではなく、PD制御のみでは振動の減衰はきわめて悪い。振動抑制のためには、柔軟性による振動を直接測定してフィードバックすることが必要である。
センサとしてはひずみゲージが用いられ、式(10)の
をフィードバックに加えることが多いが、センサの位置によっては、スピルオーバ不安定を生じる。センサは、アームの根元、すなわち
につけなければならないことが知られている。このことは、宇宙柔軟構造物の制御において、センサとアクチュエータとを同一場所に配置すれば安定な制御が可能であるとするコロケーション制御とよく似た性質である。柔軟度の高いアームに対しては、圧電素子(ピエゾ素子)を用いると、センサとアクチュエータのコロケーションが実現できる。
オブザーバを用いた最適レギュレータやモデル参照適応制御、ロバスト制御などの適用も有効であることが知られている。ロボットアームとしての軌道決定のための逆動力学解析も行われている。
多リンクフレキシブルアームや曲げのみならず、ねじりも考慮したアームも研究されている。
関連項目
参考文献
| 1) | 坂和愛幸他: フレキシブル・アームのモデリングと制御, 計測と制御,25-1,64-70 (1986). |
| 2) | 嘉納秀明:集中と分布[IV]──近似モデリングの方法──,計測と制御,26-1,968-976 (1987). |
| 3) | 特集「フレキシブル・マニピュレータ」, 日本ロボット学会誌,12-2,169-230 (1994). |





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(3)
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(5)
(6)
(7)
(8a)
(8b)
(9)
(10)